残暑や熱帯夜を過ぎ、初秋の夜に美しい音を奏でる虫の音…。鈴虫が羽を震わせ音を出し秋の訪れを感じさせてくれます。
虫の鳴き声は、昔から日本人の暮らしを豊かなものにしてくれていたようです。平安時代には、籠に入れた虫の音を楽しむ事が貴族の風流な遊びとして流行したようです。江戸時代に入り、飼育技術も進歩し庶民の間にも広がり竹細工の籠に入った鈴虫やコオロギが「虫売り」たちにより庶民に売られる様になったそうです。
鈴虫の音には、仲間と一緒にいる時の「競い鳴き」と単独でいる時の「ひとり鳴き」があるのだそうです。興味をもち耳を傾けると楽しみも広がりました。
9月16日鎌倉の鶴岡八幡宮では、「鈴虫放生祭」が行われていました。
「神前にお供えした鈴虫を神域の自然の中に放つ神事です。放生とは生き物を放つことであり、生命の尊さや季節に対する感性を大切に守り伝えようと平成16年より始められたものです。」と示されていました。
鈴虫の音は、リラックス効果があり快眠効果を促進する働きもあり副交感神経を刺激し睡眠にかかわるホルモンの分泌が促されるという、自然からの贈り物のひとつなのですね。
初秋には暦の上で台風などの強い風に気をつけなければならない、立春から数えて二百十日(9月1日) 早稲の花の咲く頃、二百二十日(9月11日)中稲の花の咲く頃、二百三十日(9月21日)は、晩稲の花の咲く時節故に暦の上で収穫への祈りが深い時期。
それを想うと鈴虫の音は、穏やかな夜の気配でもあったのかもしれません。