日本の五節句のひとつに九月九日の重陽の節句があります。平安時代に中国より伝来したもので貴族の宮中行事のひとつにになっていました。五節句のひとつになったのは江戸時代に入ってからのことです。また、菊の節句とも呼ばれ菊は「仙境に咲く霊薬」として邪気を払うと信じられ長寿をもたらす花とされていました。不老長寿は時代にかかわらず人間の変わらぬ願いだと言えます。
皇室の菊の御紋は十六葉八重表菊と呼び後鳥羽上皇が特に菊を珍重されたことから定められたものです。菊は、聖なる花として四君子の植物のひとつでもあります。
重陽の節句(九月九日)の呼び方は、陰陽思想での奇数が陽数,偶数が陰数という考え方から陽数の極である九が重なることから重陽の節句と定められ、不老長寿や繁栄を願う行事となりました。
また民間での菊の節句では、「お九日」ともいい収穫祭の意味合いが強いものでした。秋の収穫祭とも結びつきがあるため、栗ご飯や秋茄子を食べる慣習もあり栗の節句と呼ぶ地方もあるようです。菊にまつわる事柄では、菊湯 菊枕 菊酒 菊合などを行っていました。
現代でも菊の節句の頃には、食用向けの菊も出回ります。優れた抗菌作用や腐敗防止作用があるため刺身に添えられているのをしばしば目にします。
ポリフェノールやビタミンEは抗酸化作用も強く老化防止の効果が見込まれる栄養素です。ビタミンB1には疲労回復効果もあるので私たちに不可欠な栄養素も含まれています。
私は、長芋を棒で叩き食用菊と甘酢に和える菊花芋をこの季節に頻繁に作ります。菊花ならではの食感が楽しめます。是非一度、「仙境に咲く霊薬」と呼ばれていた菊花への想いを馳せながら菊花芋の一品を楽しんでいただけたらと思います。