十一月を迎えると全国の神社では、七五三のお詣りの姿が多くなり微笑ましく愛らしい姿に心和む時期です。 古い行事が消えていく中で七五三の儀式は最も華やかな形で残されている行事といえるかもしれません。
三歳の男女の「髪置き」の祝い・五歳の男児の「袴着」の祝い・七歳の女児の「帯解き」の祝いを総称して七五三の儀とされています。 「七歳前は神の子」という言葉もあるように、一人前の人間として社会に認められるけじめの儀式とされ古くは男女の区別なく七歳は親許を離れ社会性をもたせる重要な時期であり七歳の祝いが中心であったという説もあるようです。
その様な観点から、七歳での着物や装身具についてみていくと様々な願いが込められている事がみえてきます。日本の民族衣装である着物や帯の柄には、吉祥模様や松竹梅・四君子の柄があしらわれ喜びに満ち人生が栄える様にとの想いがあらわされています。また、七歳の帯祝いとも呼ばれる様に振袖を着て大人と同じように帯を締める着付けになります。
この時に必ず持つ装身具に、着物の胸元に入れる筥迫(はこせこ)があります。江戸時代後期にかけ武家社会で女性がたしなみとして鏡や櫛・懐紙やお守りなどを収めて持ち歩いてた小物入れがルーツのようです。七歳の祝いと花嫁衣装にも用います。その独特の意匠は、女性のたしなみの装身具とした名残りが受け継がれているものです。
また、帯締めに挿しこむ扇子も必ず必要な装身具です。柄には鶴や松などの吉祥柄があしらわれています。扇子は、先に向かって広がる形から「末広」とよばれ節目節目の祝い事によく用いられます。七歳の祝いや結婚の儀では、人生が末広がりに栄えるようにという願いが込められています。この時の帯締めは、中に綿が詰まった「丸くげ」という種類の帯締めを使い、七歳の祝いと花嫁衣装にも使用する形状には、永遠に続く幸せという意味が込められているそうです。
七五三の儀が続いてきた背景には、家族が子どもに対する健やかな成長を願う気持ちは時代を超えても変わらないのだと思います。そして神社で神殿に捧げる子どもに対する同じ想いの願いは家族の連帯を形に出来る貴重な時間かもしれません。
大切に守りたい行事です。